Vol.2 福島第一原発 20キロ圏内警戒区域、浪江町に立ち入る!

テレビ朝日「3・11報道STATION スペシャル~愛おしきあなたへ~」の現地取材が2月25日に福島県浪江町で行われました。これはその取材に同行させて頂いた時の私の記録です。



2012・2・25
12:05
南相馬の「道の駅」にて全員防護服に着替える。
ゴム手袋は二重。
長靴に履き替え、さらにその長靴が地面に当たる部分をビニールの靴袋で覆う。
そしてゴム手袋と防護服、長靴と防護服の接着部分をガムテープで何重にも留める。
最後にマスク、ゴーグルを装着し完全密閉。
身体をすべての物で覆い尽くす。

12:45
二台の車に乗り込む!当たり一面の銀世界…

13:15
窓外の静寂。車内の緊迫。相反する。
沈黙が続く車内。

浪江町20キロ圏内立ち入り禁止区域の検問所を通過!

13:50
浪江町駅前に到着。
駅から続くメイン通りの商店街を歩く。放射線量平均1.5マイクロシーベルト。(ちなみにその日の東京0.04マイクロシーベルト)
完全崩壊の日本家屋の食堂。曲がった街灯。扉が空いたままの雑貨屋。品物がそのまま陳列されているパン屋。駐車場に残された何台もの車。
黄点滅する 信号。
降りしきる雪…
命が一つも無くなった町!

これが今、日本に起こっている現実、この現実を思い知らされる!

14:30
立野地区
突然、目の前に二頭の黒和牛が現れる!突然の命の出現!近寄っても逃げない!
こちらをじっと見つめる瞳…その瞳の可愛さが強烈な痛みとして私の胸をえぐる…
ピーピーピーピー!危険を知らせる鳴り出す放射線量計!
放射線量10マイクロシーベルト。
ここで生きてる…牛たち…

路上の溝は異常に高い放射線量
最高値15マイクロシーベルトを記録した



15:05
苅野地区
被害を受けず田んぼの真ん中に掲げられている看板。
『みんなで作る明るい苅野』
裏切られたその言葉。
酪農家の牛舎。
牛のいない残酷で無惨で空虚な「そこ」を主(あるじ)に付いて入る。牛は一頭たりともいない。
が、強烈に漂う死の匂い。 カメラを回さないのを約束に牛舎の外に広がる雪の牧草地に案内される。
そこにはショベルカーで掘った巨大な穴があった。手前にはブルーシートがかけられてあったが奥には幾重にも重なり合った黒い大きな和牛の遺体がむき出しになっていた…
その光景!牛の顔!腕!脚!

私は静かに防護服の中で一人声を上げて泣いた…



16:15
浪江町の最大の被害地 海岸線に沿った請戸地区に移動。
福島第1原発より約4キロ地点。
林の向こうに建屋の4本の煙突を見る。
いくつもの漁船が、テトラポットが、打ち上げられたまま放置。
残った請戸小学校の校舎と体育館が海岸線より数百メートルのところに見える。
荒れ狂う海。白波がいくつも押し寄せテトラポットに砕ける大波の、しぶき。
海岸線に広がる請戸地区の住宅は無残にもその形を一切残さず…
広がる「無」に支配されている。

暗く立ち込める雲が、この答えの出ない大罪の今後を象徴しているかのように見えた。
「 死の町」と言って謝罪した政治家がいたが、住民への配慮ならそれは撤回して謝罪すべきであろう。しかし私たちの反省と言う観点でいうなら、これは本当に「死の町」を作ってしまったと思った!
ここには確実に「命」が存在しない…
ここで生きている動物たちには「力のある命」が存在しない…

このあまりにむごたらしい惨状と刻々と変化する線量計の高数字に囲まれそれでも誰が原発の存在意義を唱えられるのだろうか…


* * * * *
約4時間、浪江町の中を歩かせて頂きました。私が見て来たものを言葉でどう表現して良いのか、どうしたらお伝えできるのか…正直言葉が稚拙で歯痒いです。
私たちが良く見るコンパスで囲まれた警戒区域の20キロ圏の半円は地図上では小さいです!
しかしその半円は本当に広大でした!
橋を渡る時、浪江の町が一望出来る場所がありました。何百何千と言う屋根が見え、それはまるで「これは雪の寒さからただ人が外に出てきてないだけ!本当はお家の中に皆、いるんだ!」と錯覚をおこすような普通の当たり前の雪の風景でした。
しかし…


南相馬に戻って来た時に別場所から駆けつけて下さった浪江町の
馬場有(たもつ) 町長さんとお会いが出来、東京から作っていったお花と手紙をお渡しする事が出来ました。が、今の私にはそんな事しか出来ませんでした。
目をつぶると、昨年夏に鹿児島県霧島市でサマーキャンプをした時の、浪江町の子供達の一人一人の顔が浮かんで来ます。
どうか私たちの未来である子供達に、笑顔を取り戻す事が出来ますように…
それはそれが物凄い苦難の道であっても、もう一度原発のあり方を考えなければいけないのだと思います。


どの国がその見本を示す事が出来るのでしょうか…
どの国がその事をやらなければいけないのでしょう!
答えは一つだと思います…